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自動化された EBSD

初心者向け EBSD:10 分間ツアー


微細構造が材料の物理的特性の多くを決定するため、重要であることは既に述べたとおりです。例えば、粒径は引張強度、粒界の特性は材料の破壊形態を決定します。光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡は、微細構造を調べるために広く使われています。研磨や化学エッチングによって、粒や粒界の位置がわかりますが、これらの技術では、すべての粒がわかるわけではなく、粒や粒界に関する定量情報はほとんど得られません。電子後方散乱回折(EBSD)は、結晶の方位を測定することで、すべての粒と粒界の位置を明確に示し、その性質を決定することができるのです。

化学エッチングによりサンプル表面に現れた微細構造。
化学エッチングによりサンプル表面に現れた微細構造。

EBSDは、電子ビームを試料上で走査し、各ポイントの回折パターンから方位を測定することで、結晶方位マップを生成するために使用します。これは自動EBSDまたは結晶方位マッピングです。1回の自動EBSD分析には数秒から数時間かかり、数μm2から数cm2までの領域をカバーすることができます。個々の方位測定値は、結晶方位マップの作成に使用され、結晶方位が似ている点は同じ色で表示されます。この方位マップでは、結晶の方位が一定の方位角の許容範囲内で同じである試料の領域を結晶粒と呼びます。

さらに、自動で作成された1つのEBSDデータセットには、粒径、粒界の性質(双晶などの特殊な粒界を含む)、結晶相の分布、結晶内変形など、さまざまな追加情報が含まれています。EBSDデータセットをさらに詳細に解析することで、材料内の転位、ヤング率などの弾性特性、相変態の詳細、さらには高度な解析ツールでは弾性ひずみや残留応力に関する情報などを抽出することができます。

変形した Ni サンプルの EBSD データ例。

前方散乱方向コントラスト電子画像。
前方散乱方位コントラスト電子画像。
EBSD 方位マップ。
EBSD 方位マップ。
粒子の相対方位分布角度マップ。
粒子のGrain relative orientation distribution角度マップ。
パターン品質マップと粒子およびサイト格子境界の一致のオーバーレイ。
パターン品質マップと粒子およびサイトCoincident Site Lattice粒界の重ね合わせ像

EBSDは、微細構造と結晶学との関連性を提供するという点で、非常に優れた手法です。EBSDは、試料に存在する結晶方位に関する明確な情報を提供することで、従来の分析技術を補完し、EDSによる組成情報との組み合わせで、微細構造の特性を明らかにするための完璧なツールとなります。